浜屋裕子・中原淳著「育児は仕事の役に立つ 『ワンオペ育児』から『チーム育児』へ」は、育児中でも自信を持って仕事できるようになる【本の紹介】

浜屋裕子/中原淳著「育児は仕事の役に立つ 『ワンオペ育児』から『チーム育児』へ」(光文社新書)をご紹介します。

この題名を見たとき、まずモヤモヤっとしました。なぜだろうと考えてみると「仕事のために育児をしているわけじゃないのよ!」「育児はそれだけで素晴らしい経験なんだ」。そんな気持ちが湧いてきたのです。

なぜこんな題名なのか?

読んで感じたのは、日本は、まだそういったことを言わなければならない段階だから、です。

育児のプラス面が、育児をしている人たちには当たり前のことで、あえて言うほどのことはないと思っていると予想します。例えば、保育園や小学校の保護者同士で集まったとしても、それは共通の認識なので、当たり前すぎて「育児って、仕事を効率化させるよね」なんて議論はしません。私もその一人です。

そして、仕事に育児に家事にと日々時間に追われ、プラス面を伝えることもできていません。私自身、ブログにもそういったことは書いていないです。

本書は、育児のプラスの面を可視化してくれ、育児をしていない人にもわかりやすく伝えてくれた本なのです。私も、育児のプラス部分を、今後、情報発信していく必要があるなと思いました。

ワンオペ育児とチーム育児の定義

ワンオペ育児
夫婦のうちいずれかがひとりで抱え込まざるをえない育児(p7)

チーム育児
夫婦がそれぞれお互いに連絡を取り合い、相互の仕事や役割を調整し、家族外の支援者との連携を行いながら実行する育児(p16)

チーム育児には、単純な子どもの世話だけではなく、例えば通える保育園をリストアップするとか、連絡帳を書くとか、家庭外育児支援サービスを手配するとか、そういったことも含まれます。この部分が、結構大きいウエイトを占めるのは、育児されている方はわかると思います。

現在主流の考え方と180度違う考えを主張

現在、日本では、仕事と家族は両立が難しいという図式(ワーク・ワァミリー・コンフリクト Work -Family conflict)が一般的な考え方です。私もそう感じることがあります。

しかし、本書は、タイトルにもあるように、それと180度違う「育児は仕事の役に立つ」(ワーク・ワァミリー・エンリッチメント Work -Family enrichment )を主張しています。

具体的に仕事に役立つ能力が書いてある

仕事の役に立つといっても、仕事にはいろいろな能力が必要です。本書では、育児をすることで、伸びる能力の一つが、リーダーシップ能力だと書かれています。

確かに育児では、子どもをほめたり、叱ったり、励ましたり、感謝を伝えたりしながら、一人で靴が履けるように、トイレに怖がらずに行けるように、お手伝いを関心をもってやれるように、おもちゃを他の子どもに貸せるようになど、子どもが自立して生きていける能力を身につけられるように、日々奮闘しています。外部(保育園・小学校や育児支援サービス)ともよい連携が取れるように、気を配ります。これも、リーダーシップの一つの形ですよね。

学術研究の知見に基づいている

本書は、学術研究の知見に基づいて主張されています。引用文献も情報の出所もしっかり書かれているので、信頼できるし、自分でもその情報を調べて深堀できるところが、私には嬉しいです。

「こういうケースがあります」も大事だけれど、「研究によるとこのような結果が出ています」も重要です。お互いに補完しあうものだと私は理解しています。数ある研究のなかから、育児のプラス面を仕事という切り口でまとめたものが、本書です。

でも、一般向けにすごくわかりやすく書いてあるので、ご安心ください。

こんな人に読んでほしい

育児をしている方
育児をしながら、時間に追われて無力感にさいなまれている方
育児も仕事も中途半端だと感じている方
仕事のキャリアを考え、妊娠出産に踏み切れないでいる方

育児をしていない方
会社経営者
人事部の方
育児中の部下や同僚がいる方
育児中の人の気持ちがわからないと思っている方
育児支援者

この本を読んで、育児と仕事と家事の間で日々葛藤している私の心が、少し楽になりました。子ども最優先ではなく、家族のみんなが最大限幸せに生きれるように、そんな家庭づくりを目指していきたいと思います。

投稿者プロフィール

赤星由美子
赤星由美子
株式会社ソシエタス代表取締役。調理師/食品衛生責任者/出産ドゥーラ・産後ドゥーラ/発酵プロフェッショナル。さまざまな情報を発信していきます。